朝、開店前に「千の風になって」を練習し、ピアノを開いたまま、楽譜も開いたままにしていた。整体に来られたG夫人がその楽譜を見つけて「先日テレビでこの歌が流れて泣いたの」と話してくれた。
数年前にご主人を亡くしたとき友人が「千の風になって」の本を贈ってくれたのだという。 整体が終わってから「少しでいいからピアノでこの曲を聞かせて欲しい」と要望された。まだ他人に聴かせるほど弾きこんではいないけれど頼まれればいやとは言えないので恥かしながら弾いた。
聴衆はG夫人とその友人と私の妻の3人だけ。それでも他人が居ると緊張して指が思うように動かない。弾き終わるとG夫人は想像以上の感動してくれた。涙ぐむ寸前だった。この曲は心の癒しになる。
以前、G夫人のご主人は肝臓ガンを宣告され、主治医から余命3ヶ月と言われて夫婦で泣きながら私のところに来られた。3年間は好きだった酒も肉も止めて真面目に闘病生活をされていたがある時点から好き放題のもとの生活に戻ってしまった。それでも7年間、元気に普通の生活をされた。
愛する人と別れは、時間が経って悲しみが薄くなるのではなく、居ない生活に慣れるだけで別れた悲しみはかえって強くなるという。だから「千の風になって」の詩がすばらしい。
朝は鳥になって あなたを目覚めさせる
夜は星になって あなたを見守る
今
大切なのは
かってでもなく
これからでもない
一呼吸
一呼吸の
今である
坂村真民