仕事柄のし書きはいつもしている。表書きする字は決まっていてお中元、お歳暮、お祝い、御礼、奉献、新築祝いなどでこれらの字は書きなれている。 またお歳暮、お中元など数が必要な時はパソコンでプリントするからそれ以外の字を書く機会はあまりない。
数日前に知人から御祝に使うので2枚書いて欲しいと色紙を頼まれた。書く言葉は『氣』ともう一枚は森信三先生の『しあわせとは 人と人のご縁を 限りなく噛みしめ 味わうことなり』。
私は正式に書道を習っていないので人様に差し上げるような字を書くことができない。でも店内に書いている色紙を見て欲しいと申し出る人がたまに居るとその場合は気に入っていただいたということで差し上げることにしている。
自分の字の欠点は自分が一番よく知っている。一番嫌いなのが自分の字、ところが不思議にその下手さが愛しいから不思議だ。
昔の話になるが会社時代に総務課に配属され年賀状書きを命ぜられたことがある。数枚書いたところで上長から「会社のレベルが疑われる』からもう書かなくてよい」と止められた。
口惜しかったが確かに人様から褒められるような字ではなかった。その日から口惜しさをバネに書道に取り組んだ。
あのとき上長が厳しく言ってくれなかったら一生恥をかくような字で終わっていたかもしれない。良薬は口に苦し!!
久しぶりに書いてみるとまた下手さの味に一段と磨きがかかっている。
1本の道を
木や草と人間と
どこがちがうだろうか
みんな同じなのだ
いっしょうけんめいに
生きようとしているのをみると
ときには彼等が
人間よりも偉いとさえ思われる
かれらはときがくれば
花を咲かせ
実をみのらせ
自分を完成させる
それにくらべれて人間は
何一つしないで終わるものもいる
木に学べ
草に習えと
わたしはじぶんに言いきかせ
きょうも1本の道を歩いていく
坂村真民