残念ながら、私には林啓蔵先生の「人間論」を説明する力がない。林啓蔵先生を奥様とともに見送った荒川幸女史の巻末の言葉を借りる。
「努力すれば失うことのない幸福がある」と教えてくださった林啓蔵先生は、43歳の短い生涯を一日として徒労な日を送らず、献身的な奥様に支えられて、自然の偉大なる真実を体言されと言われているお方です。・・・・中略・・・・
松山観光港を少し北東にある蜜柑山を上り詰めると、瀬戸の海を一望できる小高い山端に、ご夫妻の墓所があります。墓碑には「我何を以ってか古先にまみえん、我が生産を以って成る」と刻まれています。指先でその文字をなどりながら、涙は溢れ胸は震えました。何時しかおふたりに肩を抱かれているようで、暮れなずむ初冬の海を眺めていました。
カメラを向けると丁度真上に太陽があって墓石が眩しく輝いていた。
人間はあらゆる偉大なものを具有して生まれてきている。あとは不断の努力と向上心により尊厳なる自己を磨き上げることだ。・・・今の私にはその程度の理解しかできていない。・・・